私の腕時計コレクション遍歴と回顧録:こだわり続けた「軸」とは

私は元々、腕時計に対して特別な興味を持っていませんでした。初めてアルバイト代で購入したG-SHOCKを社会人3年目まで使い続けていたほどです。しかし、ある時、職場の先輩からスーツに合わせる時計として「革ベルトで三針、白文字盤」といった身だしなみの大切さを説かれ、やがて私自身の気持ちに余裕が出てきたことで、機械式時計の世界に足を踏み入れることになります。

何から買うべきか分からず、20本、30本と様々なモデルを試着し、考え抜いた末、ロレックス好きの親戚の助言もあり、最初の1本としてロレックス GMTマスターII (116710LN) を正規店で購入しました。黒ベゼルにグリーンのGMT針がアクセントとなり、24時間ベゼルとGMT針で3カ国の時間が表示できるという機能性に魅力を感じました。このスポーツウォッチを約3年間使い続けたことで、私は機械式腕時計の魅力にますます深くはまり込んでいきました。

スポーツウォッチからドレスウォッチ、多様なジャンルへの探求

機械式時計の奥深さに目覚めた私は、ブログを始め、調べ、試着を重ねる中で、スポーツウォッチだけでなくドレスウォッチも欲しくなりました。

その結果、Tissot Everytime を購入。ステンレスにゴールドコーティングが施されたシンプルで上品な三針時計で、そのデザインの秀逸さに惹かれました。

ダイバーズウォッチへの興味も深まりました。ロレックスのサブマリーナーを探していた時に、たまたま在庫があったチューダー ブラックベイ GMTに出会いました。ブルーとレッドのツートンベゼルがレトロな味を醸し出しており、現行のロレックスにはない独特の魅力がありました。

その後、ロレックス サブマリーナー (116613LB、青サブ) を手に入れます。ブルーダイヤルとゴールドを組み合わせたコンビモデルは、ラグジュアリーな雰囲気が際立ち、華やかで気分が上がる一本でした。

また、時計選びのターニングポイントとなったのがカルティエ サントス-ドゥモン (MMサイズ) です。小ぶりでシンプルなデザインながら、アクティブなイメージとスポーティーな要素が絡み合う奥深い時計で、その後の私の時計選びの基準を形成しました。

チューダーからは、1950年代後半のダイバーズウォッチにインスパイアされたブラックベイ 58 (ブラックダイヤル) もコレクションに加わりました。レトロな印象のゴールドレターやアルミベゼルの質感、そして高いスペックと着けやすいサイズ感で重宝しました。

ドレッシーな分野では、時計好きが誰もが憧れるブランドの筆頭格であるパテック フィリップ カラトラバ (Ref. 5196) を所有しました。洗練されたデザインはもちろん、永久に修理が可能なため、親から子へと受け継がれていくというストーリーも魅力です。

他にも、日本の誇るブランドからも数多くの傑作を取り入れました。セイコー プロスペックス(140周年記念モデル) は、青いベゼルとシルバーがかったホワイトダイヤルのコントラストが美しく、Tシャツによく合う時計として活躍しました。また、ザ・シチズン キャリバー 0200 は、空前のラグジュアリースポーツウォッチ(ラグスポ)ブームの中で登場しました。ラ・ジュー・ペレと共同開発された機械式ムーブメントを搭載し、ケースやインデックスの仕上げが素晴らしく、オンオフで使いやすいモデルでした。

ラグスポブームと「聖杯」との出会い

私が時計収集を進める中で、世界はラグスポブームの真っただ中にありました。オーデマ ピゲのロイヤルオークやパテック フィリップのノーチラスは入手が難しい状況でしたが、その中でご縁があり購入できたのがシャペック アンタークティックです。ブレスレットの出来が非常に秀逸で装着感が抜群であり、外装のクオリティの高さとムーブメントの素晴らしさから、非常に高い所有満足度を得られました。

また、ダイバーズウォッチの「沼」に深くはまった時期には、セイコー プロスペックスの様々なバリエーション(ナイトダイビングをイメージしたブラックコーティングモデルや、深いロイヤルブルーダイヤルのモデル)を試しました。グランドセイコーのコレクションも増え、特に2022年当時のカラーダイヤルブームを反映した国内限定260本のSBGH297は、銀座の地図をダイヤルに落とし込んだ「銀座グリッドパターン」がラッカーで塗られ、GSの文字盤表現力の高さを象徴していました。

そして、長年の憧れであった「聖杯」、私の中での「ホーリー・クリール」と言える一本に出会います。それは、ロレックス GMTマスターII (126710BLRO、ペプシ) です。正規店では縁がなかったため中古での購入となりましたが、ベゼルの色味の違いといった中古ならではの面白さも含め、満足度が非常に高い時計であり、長い人生でずっと一緒にいたいと思えるモデルです。

スピードマスターへの情熱とコレクションの完成

オメガの時計では、オメガの顔とも言えるスピードマスター プロフェッショナル(ブラックダイヤル) を、まず定番として購入しました。購入の少し前、イベントでダニエル・クレイグさんが白ダイヤルを着用したことで注目が集まっていた時期でした。

その後、待望のモデルとして登場したのがオメガ スピードマスター プロフェッショナル(ホワイトダイヤル) です。黒のベゼルと艶のあるホワイトラッカーダイヤルのコントラストが格好良く、私自身が白いシャツを着る機会が多いため、服装にも合わせやすいと重宝しています。ブラックダイヤルが定番ですが、私はひねりが効いたテイストの方が好みであるため、このモデルは私の好みに強くマッチしました。

さらに、2024年のクレドールブランド誕生50周年を記念して復刻された、ジェラルド・ジェンタ氏デザインのクレドール ロコモティブにも強く惹かれました。チタン製で非常に軽く、六角形のベゼルが強烈なインパクトを与えています。付け心地の良さと、防水性(100m)を含めた完成されたスペックから、日常使いに最適な一本です。

スピードマスターの熱は止まらず、「ファースト オメガ イン スペイス」の復刻モデルも購入しました。これはオメガのスピードマスターとして初めて宇宙空間に持っていかれた時計の復刻版です。茶色がかったインデックスのヴィンテージテイスト、リューズガードのないすっきりしたデザイン、そして絶妙なブルーグレーダイヤルの色味は、ホワイトダイヤルと甲乙つけがたい傑作だと感じています。

コレクションの最後を飾るのは、ドレスウォッチの最高峰の一つ、A. ランゲ&ゾーネ ランゲ 1 ムーンフェイズです。オフセットされたダイヤルの完璧なバランスと洗練されたデザイン、アウトサイズデイトやムーンフェイズにロマンを感じます。ドレスウォッチはカラトラバとランゲ 1で「お腹いっぱい」になりました。

コレクションの「軸」を見つける旅

私のコレクション遍歴を全体として見ると、スポーツウォッチが多く、ツール感のあるもの、ヴィンテージテイストがあるものに惹かれる傾向が見て取れます。また、サイズ感や装着感も時計選びの重要なポイントでした。

この遍歴の中で、多くのモデルは入れ替えられ、現在手元に残っている時計は限られています。しかし、試行錯誤を経て、今では私の好みや趣味嗜好が色濃く反映されたコレクションが完成しつつあると感じています。

多くの時計を購入してきて痛感したのは、自分なりの「軸」や基準を持ってコレクションをすることの大切さです。新製品が出るたびに「あれもこれも欲しい」となってしまうと、収集がつかなくなってしまうためです。私の反省も踏まえ、これから時計を選ばれる方の何らかの参考になれば幸いです。


【まとめ】コレクション遍歴に見る選び方のポイント

私の時計コレクションの旅は、まるで海図のない航海から、徐々に自分の求める灯台(軸)を見つけ出す過程のようでした。最初は身だしなみを整えることから始まり、やがてツールとしての機能性(スポーツウォッチ、防水性)や歴史的背景(ヴィンテージテイスト)、そして着用感(サイズ感、薄さ、装着感)といった明確な基準へと進化していきました。多くの時計を試す中で、自分の好みとライフスタイルに真にマッチする「聖杯」に出会えたこと、そして自分らしいコレクションを築けたことが、この趣味の最大の喜びです。